在宅看取り直前のサイン|家族が準備すべきこと

看取り・終末期ケア

在宅看取り直前に寄り添う家族の手

「呼吸が変わった気がする」「もうそんなに時間がないのでは」——在宅で親を看取るご家族の多くが、最期が近づくにつれてこうした不安を抱きます。在宅看取りの直前には、呼吸のしかたや意識レベル、体温などに一定のサインが現れることが、医療・看護の現場では一般的に知られています。ここでは、家族があわてずに寄り添うための直前サインと、危篤時の連絡、エンゼルケアで家族にできることを整理してお伝えします。※症状の出方には個人差があり、必ずしもすべての方に同じように現れるわけではありません。

在宅看取り直前のサインを知っておくと、家族はあわてず寄り添える

在宅看取り直前のサインを知っておくと、家族はあわてず寄り添える

結論から言うと、看取りが近づくと「呼吸のパターンが変わる」「意識がはっきりしない時間が増える」「手足が冷たくなる」といった変化が段階的に現れることが多いとされています。これらは体が最期に向けて自然に準備を進めているサインであり、多くの場合、強い苦痛を伴うものではないと考えられています。事前にどんな変化が起こりうるかを知っておくことで、いざそのときが来ても取り乱さず、本人に寄り添う時間を持ちやすくなります。

呼吸のしかたが変わる ― チェーンストークス呼吸・下顎呼吸・死前喘鳴

呼吸のしかたが変わる ― チェーンストークス呼吸・下顎呼吸・死前喘鳴

終末期が近づくと、呼吸のパターンにいくつかの特徴的な変化が現れることが看護の現場で報告されています。

呼吸の変化 特徴 備考
チェーンストークス呼吸 浅い呼吸から徐々に深く大きくなり、再び浅くなって一時的に呼吸が止まる周期を繰り返す 脳の血流低下による自然な現象とされる
下顎呼吸(死戦期呼吸) あごを大きく動かして空気を取り込むような呼吸 亡くなる数時間前に見られることが多く、数分〜1時間前後で終わることが多いとされる
死前喘鳴 喉の奥でゴロゴロという音が鳴る 気道に分泌物がたまって起こるとされ、本人の苦痛とは限らないとされる

これらの呼吸の変化は、意識レベルが下がった状態で起こることが多く、必ずしも強い苦しさを伴う異常呼吸ではないと考えられています。ただし、症状の感じ方には個人差があるため、気になる変化があれば訪問看護師や主治医にすぐ相談することをおすすめします。

意識レベルが下がっていくときに家族が気づけること

看取りが近づくと、うとうとする時間が長くなり、呼びかけへの反応が薄くなっていくことが一般的に見られます。名前を呼んでも返事がない、目を開けても視線が合わないといった変化があっても、聴覚は比較的最後まで保たれるといわれており、声をかけ続けることには意味があると考えられています。「大丈夫だよ」「ありがとう」といった声かけは、はっきりした反応が返ってこなくても本人に届いている可能性があるため、続けてあげてください。

手足が冷たくなる・血色が変わる ― 体に起こる変化

手足が冷たくなる・血色が変わる ― 体に起こる変化

血液の循環が体の中心部に集中していくため、手足の末端から冷たくなっていくことがあります。あわせて、皮膚の色が青白っぽく、あるいはまだら模様に変化することもあるとされています。これも体が最期に向けて自然に変化していく過程のひとつと考えられており、あわてて体を温めすぎる必要はありません。タオルなどでそっと保温する程度で十分とされていますが、判断に迷う場合は訪問看護師に確認すると安心です。

手足の保温は、ぎゅっと押さえつけたりせず、そっと包み込む程度で十分です。肌ざわりのやわらかいガーゼケットなどを用意しておくと、必要なときにすぐ使えて安心です。やわらかいガーゼケットをAmazonで探す

危篤と言われたら ― 家族・親戚への連絡の実務

医師や訪問看護師から「危篤」の説明があった場合、家族はまず「誰に」「どの順番で」連絡するかを落ち着いて整理する必要があります。一般的には次のような順序で進めることが多いとされています。

  1. 同居家族・すぐに駆けつけられる近親者へ連絡する
  2. 遠方の家族・親戚には、到着までの時間を考慮して早めに連絡する
  3. 本人が信頼していた友人・知人への連絡は、家族の状況が落ち着いてからでも構わない

連絡の際は「危篤」という言葉を使い、簡潔に状況と場所を伝えるだけで十分です。すべての詳細を説明する必要はありません。あらかじめ連絡先リストを家族間で共有しておくと、いざというときに慌てずに済みます。また、訪問診療医や訪問看護ステーションの緊急連絡先を枕元やスマートフォンのメモにまとめておくことも、直前期の安心材料になります。

エンゼルケアで家族ができること

エンゼルケアとは、亡くなった後に体を清め、身なりを整える処置のことです。看護師や介護職が中心となって行いますが、家族も一緒に参加できる場面が多くあります。厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、最期まで本人の尊厳を尊重した対応が重要であるという考え方が示されており、エンゼルケアもその延長線上にある取り組みとされています。

家族ができることの例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 本人が好んでいた服やメイク用品を用意し、身なりを整える手伝いをする
  • 髪を整える、爪を切るなど、生前の姿に近づける作業に参加する
  • お気に入りの写真や花を一緒に飾る
  • 看護師・介護職に「こうしてあげたい」という希望を伝える

エンゼルケアは遺族にとって、本人と過ごす最後の時間であり、気持ちを整理するグリーフケアの一環にもなるといわれています。無理に手伝う必要はありませんが、できることがあれば参加してみることで、後悔を減らせる場合もあります。

危篤の連絡や葬儀の相談など、直前期は限られた時間の中で決めごとが重なります。あらかじめ緊急連絡先や希望をまとめておけるエンディングノートを一冊用意しておくと、家族間の連絡や確認がスムーズになります。エンディングノート(家族の連絡先整理用)をAmazonで探す

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在宅看取りの始め方や施設との比較、家族の心構え全体については、こちらの記事でまとめて解説しています。あわせて読むことで、直前期だけでなく看取り全体の流れを把握しやすくなります。

看取り介護とは?在宅・施設の選び方と家族の準備ガイド

直前期は数時間から数日の幅で経過することが多いとされ、進み方には個人差があります。「昨日より呼吸が落ち着いている」「また変化があった」と一日のうちに状態が上下することもありますが、それも珍しいことではないといわれています。不安なときは一人で抱え込まず、訪問看護師・往診医・地域包括支援センターの担当者に、遠慮なく連絡してみてください。夜間でも訪問看護ステーションの緊急連絡先につながる体制を整えているところが多く、電話で状況を伝えるだけでも気持ちが落ち着くことがあります。

在宅看取りの直前には、呼吸・意識・体温にさまざまな変化が現れますが、そのほとんどは体が自然に最期へ向かう過程だとされています。サインをあらかじめ知っておくこと、危篤時の連絡先を整理しておくこと、そしてエンゼルケアで気持ちを整理する時間を持つこと。この3つを心に留めておくだけで、家族はいざというときにあわてずに寄り添えるようになります。判断に迷う症状や変化があれば、まずは訪問看護師や主治医に相談してみてください。

写真:National Cancer Institute via Unsplash