在宅介護の停電対策|高齢者を守る今すぐの備え

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在宅介護の停電対策で灯りを手にする高齢者の手元

在宅で親の介護をしていると、停電は「不便」では済みません。電動ベッドが止まり、夏ならエアコンも消え、医療機器を使う家庭では命に関わります。この記事では在宅介護の停電対策として、停電前の備えと起きた直後の動き方を、介護がはじまったばかりの方にもわかるように整理します。

在宅介護の停電対策は「医療機器の代替電源」と「熱中症対策」が最優先

結論からお伝えします。在宅介護で停電がいちばん怖いのは、電気で動く医療機器が止まることと、夏場の室温上昇による熱中症(暑さで体調をくずすこと)です。この二つに備えておけば、いざというときの危険を大きく減らせます。

具体的には、ポータブル電源(持ち運べる大容量バッテリー)の確保、緊急連絡先を一枚にまとめること、自治体の支援制度への登録が要になります。いずれも停電が起きてからでは間に合いません。平時のうちにひとつずつ準備しておきましょう。

停電が在宅介護を直撃するもの一覧(電動ベッド・医療機器・薬・見守り)

まず、停電で何が止まるのかを確認しておきましょう。在宅介護でよく問題になるのは次のようなものです。

  • 電動介護ベッド:背上げや高さ調整が電気で動きます。手動操作用のハンドルが付く機種もあるため、付属しているか取扱説明書で確認しておきましょう。
  • 在宅酸素・吸引器などの医療機器:命に直結します。後の項目でくわしく説明します。
  • 要冷蔵の薬:インスリンなど冷蔵が必要な薬は、保管をどうするか主治医や薬剤師に相談しておくと安心です。
  • 見守りカメラ・センサー:停電や通信停止で見守りが途切れます。電話での安否確認の手段も用意しておきましょう。
  • エアコン:夏場は熱中症のリスクに直結します。これも後の項目で対策を説明します。

「うちはどれが当てはまるか」を一度書き出すと、備えるべきものがはっきりします。

医療機器を使っている家庭の停電対策(在宅酸素・吸引器・人工呼吸器)

在宅酸素濃縮器、吸引器、人工呼吸器などを使う家庭にとって、停電は最優先で備えるべきリスクです。

機種によっては内蔵バッテリーで一定時間動くものや、停電時に自動で酸素ボンベ供給へ切り替わるものもあります。ただし稼働時間や対応は機種ごとに異なり数値も変わりうるため、どこまで対応できるかは取扱説明書とメーカー(または点検業者)に必ず確認してください。吸引器は停電時の代替として足踏み式や手動式を備える方法もありますので、自分の家庭に合うかを訪問看護師や主治医に相談しておくと安心です。

そして覚えておきたいのが、停電したらまず機器の点検業者やメーカーに連絡することです。連絡すれば、予備バッテリーや酸素ボンベを届けてもらえる場合があります。自治体によっては人工呼吸器を使う家庭向けに停電への備えを案内しています(例:福岡県の案内ページなど)。お住まいの地域の窓口にも事前に確認しておきましょう。なお後で触れるポータブル電源はあくまで一時的なつなぎです。医療機器に使ってよいかは、必ず主治医とメーカーに事前相談してください。

ポータブル電源・蓄電池の選び方と容量(Wh)の目安

停電に備える心強い味方がポータブル電源です。選ぶときに迷う容量(Wh=ワットアワー、ためられる電気の量)も、考え方を知っておくと選びやすくなります。

あくまで一般的な目安として、一人分の最低限の備えなら500Wh前後、長めの停電にも備えたいなら1500Wh以上が一つの基準とされています(2026年時点)。医療機器のバックアップを考えるなら、停電の瞬間でも電気が途切れないUPS機能(無停電電源機能)付きが望ましいとされています。

「何時間動くの?」という目安は、次の考え方で見当をつけられます。

  • 動かせる時間(目安)= 容量(Wh)×約0.8 ÷ 機器の消費電力(W)

たとえば1000Whで消費電力100Wの機器を使うなら、1000×0.8÷100=約8時間が目安です。ただし0.8という数字や実際の持ち時間は使い方や気温で変わり、機器ごとの消費電力(W)は取扱説明書やメーカー表示での確認が必要です。あくまで「だいたいの見当」としてお使いください。容量や機能の異なる製品が各社から出ていますので、ご家庭で使う機器に合った一台を選びましょう。

停電中の熱中症を防ぐ室温対策(エアコンが使えないとき)

夏の停電でもっとも怖いのが熱中症です。とくに高齢者は屋内で発症することが多く、暑さやのどの渇きを感じにくい傾向があるとされています(環境省 熱中症予防情報サイト)。停電したら、まず次のような対策で熱がこもるのを防ぎましょう。

  • カーテンやすだれで日差しをさえぎり、外からの熱の侵入を抑える
  • 保冷剤や冷却シートで、首・脇の下・足の付け根など太い血管のある場所を冷やす
  • のどが渇く前に、こまめに水分と塩分をとる(飲み込みに不安があれば主治医に相談を)

それでも室温が下がらず危険を感じるときは、無理をせず冷房の効いた施設や福祉避難所などへの避難を考えてください。高齢者は水分が不足しやすいため、高齢者が水を飲まないときの対策もあわせて参考になります。

停電が起きる前にやる備えと、起きた直後の動き方

停電は「前の備え」と「起きた直後の行動」の両方で被害を大きく減らせます。時系列で整理しておきましょう。

【停電が起きる前にやっておくこと】

  • 緊急連絡先を一枚にまとめる(地域の送配電会社、ケアマネ、かかりつけ医・訪問看護、医療機器の点検業者)
  • ポータブル電源を満充電にし、定期的に充電を保つ
  • 薬・飲料水・保冷剤・懐中電灯・モバイルバッテリーを常備する

停電の問い合わせ先は、契約している電力会社(新電力を含む)ではなく、地域の送配電会社(東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など)が窓口です。あらかじめ調べてメモしておきましょう。

【停電が起きた直後の動き方】

  1. まず本人と家族の安全を確認する
  2. 停電の範囲・復旧見込みを地域の送配電会社の停電情報で確認する
  3. 医療機器を使っている場合は、点検業者やメーカーに連絡する
  4. 夏なら室温管理を始める(前項の熱中症対策)
  5. 危険を感じたら、ためらわず避難を判断する

【山本利也(ケアマネージャー)からのひとこと】

停電のとき「こんなことでケアマネに連絡していいのかな」と遠慮される方が多いのですが、遠慮はいりません。施設側の立場から言うと、不安なときこそ早めに一報をいただいたほうが私たちも動きやすいです。現場では実際に、平時の面談で緊急連絡先と「誰が・どこへ・どう避難するか」をご家族と一緒に決めておくと、いざというとき迷いが減ります。次の打ち合わせで、停電時の段取りを一度すり合わせておきましょう。

自治体の「避難行動要支援者名簿」「個別避難計画」に登録しておく

公的な支援の入口として知っておきたいのが、避難行動要支援者名簿と個別避難計画です。災害時に一人で避難するのがむずかしい方について、誰がどこへ避難を手伝うかを平時に決めておく仕組みです。

名簿は2013年の法改正で市区町村に作成が義務づけられ、個別避難計画は2021年の法改正で作成が努力義務となりました。対象となりうるのは要介護3〜5の方や75歳以上のみの世帯などですが、対象や運用は自治体によって異なります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口やケアマネに相談してみてください。

関連記事・もっと詳しく知りたい方へ

夏の暑さや防災を含めた在宅介護のグッズ全体像は、介護の暑さ・防災グッズ対策まとめをご覧ください。夏場の暑さ対策をくわしく知りたい方は、高齢者の暑さ対策グッズも参考になります。

停電対策は平時の小さな準備の積み重ねです。今日はまず、緊急連絡先のメモづくりとご家庭の機器の確認から始めてみてください。

写真:MÁRIO ROCHA via Unsplash