認知症の夕暮れ症候群、秋に悪化する理由と対応5つ

認知症ケア

認知症の夕暮れ症候群と秋の日没のイメージ

認知症の夕暮れ症候群、秋に悪化する理由と対応5つ

認知症の夕暮れ症候群、秋に悪化する理由と対応5つ

認知症のあるご家族が、秋になって夕方だけ落ち着かない。そんな声が増える季節です。夕暮れ症候群(夕方に不安や落ち着かなさ、帰宅願望が強まる状態)に、あらためて向き合うご家庭が多くなります。

背景のひとつとして、日没が急に早まることが挙げられます。国立天文台の暦計算室のデータ(2026年・東京)によると、9月1日から11月30日までで日の入りは約1時間41分早まります。夕方の暗さが訪れる時刻が、ひと月ごとに前倒しになっていくわけです。

この記事では、①照明の点灯時刻の見直し、②夕方の過ごし方の調整、③否定しない声かけ、④安心できる居場所づくり、⑤家族側の段取りの前倒し、という5つの対応をお伝えします。あわせて、受診を考えたいサインもまとめました。

秋は日没が1か月で40分近く早まります

秋は日没が1か月で40分近く早まります

まずは客観的な数字を確認しましょう。国立天文台の暦計算室が公開している日の出入りのデータ(2026年・東京)では、秋の日の入り時刻は次のように変化します。

月初の日の入り 月末の日の入り 1か月の短縮幅
9月 18時09分(1日) 17時27分(30日) 約42分
10月 17時26分(1日) 16時47分(31日) 約39分
11月 16時46分(1日) 16時28分(30日) 約18分

9月と10月の短縮ペースがとくに速いことがわかります。9月1日から11月30日までを通すと、合計で約1時間41分。夏のつもりで動いていると、気づけば外が暗い、という状況になりやすい時期です。

※お住まいの地域によって日の入り時刻は異なります。上記は東京の数値です。

光と体内時計が生活リズムに関わるしくみ

ここからは一般的な知識のお話です。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、体内時計や概日リズム(およそ24時間周期の生体リズム)について解説されています。ヒトの体には一日のリズムを刻むしくみがあり、光がそのリズムに関わることが知られています。

秋は日照時間そのものが変わる季節です。そのため、暮らしのリズムにも影響が及ぶ可能性が考えられています。ただし、日没が早まることと夕暮れ症候群が強まることの直接的な因果を示す公的なデータがあるわけではありません。

それでも季節の変わり目には、「最近とくにひどい気がする」というご家族の声が増える時期であることは確かです。数字と実感、その両方を頭に置いておくと対応を考えやすくなります。

秋の夕方に試したい5つの対応

秋の夕方に試したい5つの対応

日が短い時期の対応として、ご家庭で試しやすい工夫を5つ挙げます。どれも効果が保証されるものではありませんが、負担が少なく始められるものばかりです。

  1. 照明の点灯時刻を前倒しする:これまで17時に点けていたなら、16時半に見直してみる。タイマー設定をそのままにしているご家庭は多いので、月に一度は見直すという工夫があります。
  2. 夕方は刺激を減らす方向で調整する:テレビの音量を下げる、来客や電話の対応を夕方以外にずらすなど。にぎやかさが負担になることがあります。
  3. 声かけは否定しない言葉を選ぶ:「違うでしょう」ではなく「そうなんですね」から入る。安心できる言葉のほうが、落ち着きやすくなることがあります。
  4. 安全に過ごせる居場所をつくる:夕食の準備中でも顔が見えるよう、キッチンの近くに座れる場所を用意しておく。姿が見えるだけで安心につながる場合があります。
  5. 家族側の段取りを前倒しする:帰宅や夕食準備を30分早めるだけで、あなたの気持ちに余裕が生まれます。余裕は、そのまま関わり方の余裕になります。

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帰宅願望が強まる時間帯の関わり方

夕方に「家に帰ります」と訴える帰宅願望は、ご自宅にいても起こります。ここで「ここが家でしょう」と正すと、かえって不安が強まることがあります。

まずは否定せず、「そうですか、帰りたいんですね」と話を受け止めてみてください。そのうえで「お茶を一杯飲んでからにしましょうか」と一区切り置く、洗濯物をたたむなど手を動かす用事に一緒に取りかかる、といった気分転換に誘う関わり方があります。

時間帯に傾向があるなら、その少し前から一緒に過ごす時間を持つのもひとつです。記録をつけておくと、後日ケアマネジャーや医師に相談するときの材料にもなります。

【佐藤ヘルパー(訪問介護歴8年)からのひとこと】

訪問介護の現場では、日中は穏やかなのに夕方だけそわそわされる方によくお会いします。わたしがまずするのは、用件を片づけることより、隣に座って世間話をすることです。「もう暗いですね」と一緒に外を見るだけで、間が持つことがあります。うまくいかない日ももちろんあります。ご家族が「自分の対応が悪いのでは」と責める場面をよく見ますが、時間帯そのものに波があるだけのことも多いのです。どうか、ご自分を責めすぎないでください。

不穏の裏に体調の不調が隠れていないか確かめたいサイン

夕方の不穏を、季節や環境のせいだと決めつけないことも大切です。国立長寿医療研究センターや日本老年医学会の資料では、便秘・脱水・発熱・痛みといった身体合併症が背景要因になりうると指摘されています。これらはせん妄(急性の意識の混乱)やBPSD(認知症の行動・心理症状)につながることがあります。

認知症のある方は、自分から体調不良を訴えることが難しく、発見が遅れやすいという特徴もあります。「いつもと様子が違う」「ここ数日で急に悪くなった」と感じたら、それはかかりつけ医に相談するサインです。排便の状況や水分量、体温も一緒に伝えてください。

また、国立長寿医療研究センターや日本認知症学会のガイドラインでは、BPSDへの対応としてまず薬を使わない対応を検討する考え方が示されています。具体的には環境調整やケアの見直し、心理的な関わりなどです。なお、医療機関で行われるものとして高照度光療法という治療法があり、研究も進められています。これは家庭で照明を早めに点けることとは別のもので、ご家庭の工夫を治療と呼べるわけではありません。

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夕方だけでなく、日々の関わり方全般を整えたい方は認知症の親への接し方:家族が今日から使える5つの基本をご覧ください。声かけの土台になる考え方をまとめています。季節との付き合い方という点では梅雨の時期の記事も参考になるはずです。

この記事の要点は3つです。秋は日の入りが3か月で約1時間41分早まること。日没と不穏の因果は断定できないものの、夕方の環境を整える工夫はできること。そして急な変化の裏には体調不良が隠れていることがある、という点です。

まず明日やることを1つだけ挙げるなら、照明のタイマー設定を30分早めることです。それだけなら5分で終わります。そのうえで、対応に迷いが出てきたら地域包括支援センターやかかりつけ医にご相談ください。ひとりで抱え込まないことが、いちばん長続きするコツです。

【出典・参考】