
認知症の親の徘徊は、実は冬より夏のほうが命に関わります。夏ならではの対策が必要と聞くと意外かもしれませんが、夏は短時間で熱中症が重症化するうえ、薄着で持ち物が少なく、保護されても身元の特定が遅れやすいのです。この記事では、夏特有のリスクと家庭でできる備え、そして外に出てしまった直後60分の動き方までを解説します。
認知症の徘徊が夏に増える理由と今すぐできる対策
結論からお伝えすると、夏の備えは次の4本柱で考えると整理しやすくなります。①夏特有のリスクを知る、②GPSなどで「出てしまった後」に備える、③家の工夫で外出に気づける環境をつくる、④いなくなった直後60分の手順を決めておく、の4つです。警察庁が2025年6月に公表した令和6年の統計では、認知症またはその疑いがある行方不明者は18,121人にのぼりました。大きな数字ですが、裏を返せば多くの方が発見・保護されています。正しく備えれば防げますし、見つけられます。本人を責めるのではなく「気づける・見つけられる」体制づくりを、今日から始めましょう。
夏の徘徊に潜む3つのリスク|熱中症・身元特定の遅れ・夕暮れ症候群
1つ目のリスクは熱中症との合併です。認知症の方は暑さや喉の渇きを自覚しにくく、炎天下でも休まず歩き続けてしまうことがあります。そのため、外に出てから短時間で重症化しやすいのが夏の怖さです。室内も含めた熱中症の一般的な予防は、高齢者の熱中症予防、家族が今すぐできる5つのことで詳しく解説しています。
2つ目は身元特定の遅れです。夏は薄着で上着のポケットもなく、持ち物も少ないため、保護されても名前や連絡先が分からず、家族へ連絡が届くまでに時間がかかりがちです。
3つ目は夕暮れ症候群(夕方になると不安や混乱が強まり、落ち着かなくなる症状)です。夏は日没が遅いため、ひとり歩きがまだ明るい時間に始まり、家族が「散歩かな」と見過ごしやすくなります。さらに、亡くなった状態で発見される場所は河川や用水路、山林が多いと報告されています。涼を求めて水辺へ向かうことも考えられるため、夏は水辺への警戒が欠かせません。
GPS・見守りグッズで「出てしまった後」に備える
どれだけ気をつけても、外に出てしまう可能性をゼロにはできません。だからこそ「出た後に早く見つける」道具が心強い味方になります。代表的なのは次の4タイプです。
- 靴に入れるGPS:外出時に必ず履く靴へ内蔵します。持ち物を忘れやすい親に向きます
- キーホルダー型GPS:鞄や杖につけます。決まった持ち物を手放さない親に向きます
- 衣類用QRコードシール:発見者が読み取ると家族へ連絡が届く仕組みです。電池切れの心配がなく、自治体が無料配布している地域もあります
- 玄関開閉センサー:ドアが開いた瞬間にスマホへ通知が届きます。同居や近居の家族に向きます
GPS端末の貸与や購入費の助成を行う自治体も増えています。※支援内容は自治体によって異なります。どれを選ぶか迷ったら、まず市区町村の高齢者福祉窓口で「認知症の見守り支援」について確認してみてください。
端末選びで迷ったときは、子どもの見守り用として広く使われている「みてねみまもりGPS」がひとつの目安になります。大容量バッテリーで充電の手間が少なく、ストラップで鞄や杖に付けやすいため、高齢の親の見守りにも使われています。月額の通信料がかかる点だけ確認したうえで検討してみてください。みてねみまもりGPSをAmazonで見る
夜間・早朝の外出を防ぐ家の工夫
家の工夫の目的は「閉じ込めること」ではなく、「家族が気づける家にすること」です。次の4つが定番です。
1つ目は補助錠の位置の工夫です。目線より高い、または低い位置に付けた鍵は視界に入りにくく、認識されにくいとされています。2つ目はドアの開閉センサーや人感センサーライトです。夜間の動きに家族がすぐ気づけます。3つ目は玄関の見た目の工夫です。のれんやカーテンでドアを覆うと「出口」と認識されにくくなり、外出のきっかけが減ることがあります。
4つ目は、外に出たい気持ちを先に満たすことです。夕方にそわそわし始める前に声をかけ、夕食前の散歩に一緒に出る。それだけで夜の外出が落ち着く方は少なくありません。
【佐藤ヘルパー(訪問介護歴8年)からのひとこと】
訪問介護の現場では、玄関にのれんを掛けただけで外に出る回数が減ったお宅を実際に見てきました。ドアが視界に入らないだけで落ち着く方は多いんです。もうひとつ効くのが夕方の散歩です。外に出たがるのには「家に帰る」「仕事に行く」など本人なりの理由があります。止めるより先に「一緒に行きましょう」と15分付き合うと、夜が落ち着く方を何人も見てきました。責めずに付き合う、が合言葉です。
いなくなった直後60分の動き方|110番とSOSネットワーク
万一いなくなったときは、時間で区切って動くと迷いません。
0〜10分:自宅周辺やよく行く場所を確認しながら、ためらわず110番してください。行方不明者届はその日のうちに出せます。「24時間待つ必要がある」というのは誤解で、認知症の方の場合はすぐ受理されるのが一般的です。
10〜30分:市区町村の「認知症高齢者等SOSネットワーク」(協力機関へ情報を配信して捜索につなげる仕組み)に連絡します。事前登録が必要な地域が多いため、平時に高齢者福祉窓口か地域包括支援センターで登録を済ませておきましょう。※名称や仕組みは自治体によって異なります。
30〜60分:家族や近隣に連絡し、手分けして探します。夏は川や用水路など、水辺の方向を優先してください。
警察庁が2025年6月に公表した令和6年の統計では、行方不明18,121人のうち死亡が確認されたのは491人でした。亡くなった方の77.8%は5km圏内で発見され、発見場所の54%は河川・用水路・山林です。遠くを探す前に、近くの水辺へ早く向かうことが命を分けます。
お盆の帰省で確認したい徘徊のサイン|遠距離介護のチェックリスト
離れて暮らす親の場合、お盆の帰省はひとり歩きの兆候を確かめる貴重な機会です。次の5点を確認してみてください。
- 玄関の靴が乱れていないか、外履きが定位置にあるか
- 近所の方から「最近よく見かける」という話が出ていないか
- 夕方になるとそわそわして外に出たがる様子がないか
- 室温が高すぎないか、冷蔵庫の中身に異変がないか
- GPSや連絡先カードを身につけているか
帰省は、見守り機器の設置まで済ませられる貴重なタイミングでもあります。SwitchBotの開閉センサーは玄関ドアに貼り付けるだけで取り付けられ、工事は不要です。別売りのハブと組み合わせれば、離れて暮らす家族のスマホにも開閉の通知を届けられます。SwitchBot 開閉センサーをAmazonで見る
帰省時の暑さ対策の全体像は、遠距離介護の夏帰省|一人暮らしの親の熱中症対策ロードマップで確認できます。
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ひとり歩きは、本人にとって「家に帰る」「仕事に行く」といった目的のある外出です。叱ったり責めたりすると不安が強まり、かえって外出が増えることもあります。責めない関わり方の基本は、認知症の親への接し方:家族が今日から使える5つの基本で解説しています。

