
高齢者の夏の皮膚トラブル(あせも・かぶれ)ケアガイド
「親の背中が赤くかぶれている」「おしりにぽつぽつが出てきた」——夏が近づくとこういった皮膚のトラブルに気づく機会が増えます。高齢者は皮膚のバリア機能が低下しているため、高温多湿の夏はあせも・おむつかぶれ・湿疹といった皮膚トラブルが起きやすい季節です。この記事では、在宅介護を担う家族が今日からできるスキンケア手順と受診の目安をまとめます。
高齢者の夏の皮膚トラブルは、バリア機能の低下と高温多湿が重なって起こります

年齢を重ねると、皮膚の水分を保つ「皮脂膜(ひしまく)」や「天然保湿因子」が減り、外からの刺激に弱くなります。さらに汗腺(かんせん)の機能も変化し、出た汗が汗管(かんかん)に詰まりやすくなります。この状態で夏の高温多湿な環境に置かれると、皮膚で細菌が繁殖しやすくなり、炎症が広がりやすくなります。
特に寝たきりや車いすの方は、背中・おしり・太もものつけ根など、ベッドや衣類に密着した部位が蒸れやすく、皮膚トラブルの温床になります。おむつを使用している場合は、排泄物の水分・アンモニアが皮膚をさらに刺激します。
あせも(汗疹)が出やすい部位と正しいケア手順
あせもは、汗管が詰まって汗が皮膚の下にたまることで起こります。高齢者は「かゆい」「赤い」と自分から伝えにくいこともあるため、ケアの際に首まわり・背中・脇の下・股間・膝の裏を目視で確認する習慣をつけましょう。
- 汗をかいたら、ぬるめの湯(38〜40℃を目安)でサッと流すか、柔らかいタオルを水でしぼって優しく拭き取る
- 拭き取り後はよく乾燥させてから衣類を着る。ドライヤーの冷風を遠くから当てる方法も有効です
- 長時間同じ姿勢が続く場合は、タオルを背中に挟んで蒸れを軽減する
- 市販の炉甘石(ろかんせき)ローション等を使う場合は、清潔な肌に薄く塗るのが基本です
市販薬を使っても1〜2週間で症状が落ち着かない場合は、皮膚科への相談をおすすめします。
あせもケアの清拭には、皮膚への刺激が少ない介護用ウェットシートを使うと汗や汚れをやさしく落とせます。訪問介護の現場でも広く使われており、自宅介護にも取り入れやすいアイテムです。介護用ウェットシート(清拭用)をAmazonで探す
おむつ使用者に多い「かぶれ・皮膚炎」の防ぎ方
おむつを使用している場合、蒸れ・排泄物との接触・おむつ素材との摩擦が重なって接触性皮膚炎(おむつかぶれ)が起きやすくなります。夏はおむつ内の温度・湿度が上がるため、平時より発症しやすくなります。
- 排泄後はできるだけ早くおむつを交換する。夏は交換頻度を通常より増やすことも検討を
- 清拭の洗浄剤は1日1回を目安にとどめ、それ以外は水をしみ込ませたコットンや介護用ウェットシートで優しく拭き取る
- 拭き取り後はしっかり乾燥させてからおむつを着ける。湿ったまま当てると蒸れが悪化します
- ワセリンや亜鉛華軟膏(あえんかなんこう)を薄く塗ってからおむつをあてると、排泄物から皮膚を守る層になります
- 通気性の高いおむつやパッドへの切り替えも選択肢のひとつです。担当ケアマネや訪問看護師に相談してみましょう
入浴・清拭で肌トラブルを防ぐ4つのコツ
夏の入浴・清拭は「汗と皮脂汚れを落としながら、肌をいたわる」バランスが大切です。
- 湯温は38〜40℃のぬるめに:熱いお風呂は皮脂を落としすぎてバリア機能を下げます。のぼせにも注意が必要です
- 石けんは泡立てて「泡で洗う」:スポンジや手でゴシゴシこすると皮膚を傷つけます。たっぷりの泡を肌に乗せてなでる感覚で
- 清拭の場合は絞ったタオルを2枚用意:1枚目で汚れを取り、2枚目でやさしく拭き取る。1枚で繰り返し拭くと汚れが広がります
- 入浴・清拭後5分以内に保湿剤を塗る:皮膚が湿っている間に保湿すると水分が逃げにくくなります
【佐藤ヘルパー(訪問介護歴8年)からのひとこと】
訪問介護の現場では、夏の清拭でタオルを1枚で繰り返し使ってしまうことがよくあります。でも1枚だと拭き取った汗や汚れが広がってしまうんです。清潔な面を使い分けるだけで皮膚の状態が大きく変わります。担当のヘルパーさんに「夏はタオルを多めに準備しておきますね」と一言伝えていただけると、ケアの精度がぐっと上がります。
保湿ケアと衣類・寝具の選び方
夏だからといって保湿をやめると、バリア機能がさらに低下してトラブルを招くことがあります。ただし、冬場に使っていた油分の多いクリームは夏には向かないことがあります。
- 保湿剤はさらっとしたローションタイプを:ヒアルロン酸・尿素配合のものが広く使われています。なお、尿素クリームは傷口や炎症がある部位には刺激になることがあるため、赤みや傷がある箇所には塗らないようにしましょう
- 衣類は綿・麻などの天然素材が向いています:吸湿・速乾性が高く蒸れにくいです。化学繊維のインナーは汗を吸いにくく、蒸れにつながりやすいです
- 室温は28℃以下を目安に:エアコンを嫌がる場合は扇風機と組み合わせて「設定温度を下げすぎない工夫」をするのも受け入れやすい方法です
- 夏用の薄手シーツに切り替える:接触冷感素材や綿の薄手シーツに替えると背中の蒸れが変わります
夏の保湿剤は、さらっとしたローションタイプが肌に負担なく使いやすいです。尿素配合やヒアルロン酸配合の低刺激タイプが在宅介護の場でも多く選ばれています。保湿ローション(尿素配合)をAmazonで探す
皮膚科を受診するタイミングの目安
自宅でケアを続けても、次のような状態が見られる場合は早めに皮膚科への受診をご検討ください。
- 患部から黄色い膿が出ている、または腫れ・熱感が強い(細菌感染が疑われる場合があります)
- 市販薬を1〜2週間使っても症状が落ち着かない、あるいは悪化している
- 皮膚トラブルが体の広い範囲に広がっている
- 発熱を伴っている
- おむつかぶれが繰り返し起きる
訪問診療を利用している場合は、次回の診察時に「皮膚の状態が気になる」と伝えるか、スマートフォンで写真を撮って担当医に見せる方法もあります。遠慮せずに相談しましょう。
介護全体の流れを知りたい方へ
夏の皮膚ケアは日々の介護の中の一部です。介護保険サービスや手続きの全体像については「40代で介護が始まったらまず知っておきたいこと」にまとめています。あわせてご覧ください。
毎日の観察とケアの積み重ねで、夏の皮膚トラブルは多くの場合に防ぐことができます。「いつもと違う」と感じたら早めに対処する習慣をつけておくと、重症化を防ぐ近道になります。訪問看護やケアマネなど専門職も積極的に活用しながら、介護の日常を乗り越えていきましょう。

