
夏になると、高齢の親が夜中に起きてしまい、昼夜逆転で眠れない――そんな悩みは在宅介護でよくあります。高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくく、夏の不眠は体への負担にもつながります。この記事では、原因と戻し方、せん妄との見分け方までをわかりやすくお伝えします。
夏の高齢者の不眠・昼夜逆転は、環境と生活リズムの調整で戻せることが多い
夏に高齢の親が眠れない、昼夜逆転してしまうとき、まず見直したいのは寝室の環境と日中の過ごし方です。暑さや脱水、日中の活動量の低下が重なって、体内時計(生活のリズムを刻む体の仕組み)が乱れやすくなるとされています。睡眠薬にすぐ頼る前に、家庭でできる調整から始めると、自然な眠りに戻りやすくなる場合があります。介護する側の負担を減らすためにも、順番に整えていきましょう。
夏に高齢の親が夜中に起きる・眠れなくなる主な原因
夏の不眠には、いくつかの原因が重なっていることが多いです。代表的なものを挙げます。
- 寝室の暑さ・湿気による寝苦しさ
- 汗による脱水(体の水分不足)
- 日中の活動量が減り、体が疲れていない
- 体内時計の乱れによる入眠リズムの崩れ
とくに注意したいのが、高齢になると暑さやのどの渇きを感じにくくなる点です。本人は「暑くない」「水はいらない」と言っても、体は水分を失っていることがあります。エアコンを切ったまま眠ってしまったり、水分が足りずに夜中に目が覚めたりすることも、夏ならではの原因と考えられます。
夜の睡眠を妨げない室温・湿度の目安
寝室の環境は、眠りの質に大きく関わるとされています。一般的な目安として、室温は28℃前後、湿度は50〜60%ほどが快適とされることが多いです(健康長寿ネットなどの情報による目安です)。これはあくまで目安で、体感には個人差があります。
夏の夜は、エアコンを切ると室温が一気に上がりやすくなります。タイマーで途中に切れると、その暑さで目が覚めてしまうこともあります。電気代が気になる気持ちはわかりますが、熱中症のリスクを考えると、夜通しつけっぱなしにする考え方も知っておくと安心です。設定温度や風向きを調整し、体に直接風が当たらないようにする工夫も役立ちます。
エアコンをなかなか使ってくれない場合は、エアコンを嫌がる親への声かけのヒントもあわせてご覧ください。扇風機や冷感寝具などの暑さ対策グッズを組み合わせるのもひとつの方法です。
昼夜逆転を戻す日中の過ごし方
昼夜逆転を戻すには、夜だけでなく日中の過ごし方を整えることが大切とされています。体内時計は、朝の光を浴びることでリセットされやすくなると考えられています。まずは朝、カーテンを開けて自然光を取り入れることから始めてみてください。
日中はできる範囲で体を動かすことも、夜の自然な眠気につながりやすくなります。近所を一緒に散歩したり、椅子に座ってできる体操を取り入れたりするだけでも違ってきます。ずっと横になって過ごすと、昼と夜の区別がつきにくくなりがちです。
昼寝をする場合は、長くなりすぎないことがポイントです。一般的には15〜30分ほど、時間帯は15時より前までが目安とされています。夕方以降に長く眠ってしまうと、夜の入眠が遅くなり、かえって昼夜逆転を強めてしまうことがあります。
【佐藤ヘルパー(訪問介護歴8年)からのひとこと】
訪問介護の現場でも、夏に昼夜逆転になりかけた利用者さんは少なくありません。あるお宅では、朝に5分だけ一緒に玄関先へ出て光を浴び、「今日は暑くなりそうですね」と声をかけることから始めました。昼食後に15分ほどの短い昼寝にとどめてもらったところ、少しずつ夜にまとまって眠れるようになった方もいます。完璧を目指さず、まずは朝の声かけと短い昼寝から。ご家族だけで抱え込まず、担当のヘルパーにも気軽に相談してみてください。
不眠とせん妄の見分け方|急な錯乱・幻覚は受診のサイン
夏の夜に親の様子がおかしいとき、ただの不眠なのか、せん妄(急に意識や注意が混乱する状態)なのかで対応が変わります。家族が気づくための目安を整理します。
- 夜だけ目が覚める状態が続く → 昼夜逆転寄りと考えられる
- 急に話が通じない・つじつまが合わない → せん妄を疑う
- 見えないものが見える(幻覚)と訴える → せん妄を疑う
- 日中と夜で状態の波が大きい → せん妄を疑う
せん妄は、脱水や体調の変化が引き金になることがあるとされています。夏は汗で水分を失いやすいため、とくに注意したい時期です。急な錯乱や幻覚、つじつまの合わない言動が見られたら、自己判断せず、早めにかかりつけ医を受診してください。診断はあくまで医療者が行うものであり、家族はこれらを「受診のサイン」として捉えるとよいでしょう。
睡眠薬を飲ませる前に家庭でできること・医師に相談する目安
眠れない日が続くと、睡眠薬に頼りたくなるかもしれません。ただ、市販薬や手元にある薬を、家族の自己判断で飲ませ始めるのは避けてください。高齢者の場合、薬によって日中に強い眠気が残ったり、夜間にふらついて転倒したりするリスクが指摘されています。
まずは、これまで紹介した環境の調整・水分補給・生活リズムの見直しから試してみてください。それでも改善が見られない、本人がつらそうだという場合は、かかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。どんな薬が合うか、量や飲み方をどうするかは、専門家に判断してもらうのが安心です。気になる症状があるときは、早めに医師へご相談ください。
夏の介護と認知症ケアをもっと知りたい方へ
昼夜逆転や不眠は、認知症のケア全体の中で向き合うことも多いテーマです。あわせて認知症の人への接し方や夏の徘徊対策、暑さ対策グッズもご覧いただくと、夏の在宅介護の不安を減らすヒントが見つかります。

