
お盆に久しぶりに実家へ帰ったとき、親の様子に「あれ、前と少し違うかも」と感じたことはありませんか。わたしも数年前、帰省した実家で同じ話を何度も聞かされ、胸の奥がざわつきました。年に数回しか会わないからこそ、その小さな変化が引っかかる。帰省で気づく親の認知症のサインは、決して大げさなものではなく、ふだんの会話や台所のなかにそっと混じっています。決めつける前に、まず一緒に見ていきましょう。
お盆の帰省で見るべきは「物忘れ」より「生活に支障が出ていないか」
久しぶりに帰省したわたしが、いちばん最初に身構えたのは「物忘れ」でした。でも、人の名前が出てこないくらいは、わたし自身にもよくあることです。専門医のあいだでは、認知症は「もの忘れ」そのものではなく「生活に支障が出る状態」として見られるといいます(参照:ダイヤモンド・オンライン)。つまり見るべきは、忘れたかどうかより、暮らしが回らなくなっていないか。
年に数回しか会わないわたしたちは、毎日見ている人より前回との差分に気づけます。それは帰省という機会がくれる、ちょっとした特権かもしれません。この記事では、加齢による物忘れと気になるサインを見分けるチェックリストと、本人を傷つけずに次の一歩へつなぐ声かけの例を、わたしの体験もまじえてまとめました。
「年のせいの物忘れ」と「気になるサイン」はどう違う?
帰省して最初にぶつかったのが、この線引きでした。加齢による普通の物忘れは、体験の一部を忘れるけれど、ヒントがあれば思い出せます。「ほら、去年の法事のときの」と言えば「ああ、あれね」とつながる。曜日をたまに間違えるくらいも、わたしにも覚えがあります。
一方で気になるサインは、体験そのものをまるごと忘れていることが多いといわれます。さっき話したこと自体の記憶がなく、自覚も薄い。今日が何月何日か、季節すらわからない。そんな様子が続くなら、ひとつの目安になります。
ただ、これはあくまで家族が「あれ?」と気づくためのきっかけであって、医師の診断ではありません。当てはまったからといって、すぐに何かが確定するわけではないのです。わたしも最初は、この区別がつかず夜中まで考えこんでいました。
帰省時チェックリスト|久しぶりだからこそ見える親の異変
では、具体的にどこを見ればいいのか。久しぶりに会うわたしたちは、毎日のなかで少しずつ進む変化を「前回との差」として一気に感じ取れます。会話・生活の痕跡・お金まわりの3つの場面で、いつもの様子と気になるサインを並べてみました。
| 場面 | いつもの様子(加齢の範囲) | 気になるサイン(相談のきっかけ) |
|---|---|---|
| 会話 | 人の名前が出てこないがヒントで思い出す | 同じ話・同じ質問を短時間に何度も繰り返す |
| 日付・予定 | 曜日をたまに間違える | 今日が何月何日か・季節がわからない |
| 料理・家事 | 品数が少し減った | 鍋を焦がす・段取りが組めない・味付けが極端に変わった |
| 冷蔵庫・買い物 | 多少の買い置きがある | 賞味期限切れや同じ食材が大量に溜まっている |
| 金銭・郵便 | レシートを取っておく程度 | 郵便物や払込票が未開封で山積み、小銭ばかりで支払う |
| 身だしなみ | 多少無頓着になった | 季節外れの服を着る・入浴の回数が明らかに減った |
| 表情・意欲 | のんびりするようになった | 好きだった趣味をやめ、外出や会話を避ける |
いくつか当てはまっても、認知症と決まるわけではありません。これは家族が「あれ?」と気づくための目安であり、医師の診断ではないのです。わたしの場合は、冷蔵庫の奥で同じ豆腐が3つ並んでいたのが、いちばん引っかかったきっかけでした。
数字で見る「うちの親も?」――認知症は誰にでも起こりうる
あの帰省のあと、わたしは「うちの親だけ特別なのか」とずいぶん落ち込みました。でも、調べてみると決してそうではありませんでした。
厚生労働省研究班(九州大学・二宮利治教授らによる推計)が2024年に公表した数字では、認知症の高齢者は2025年で約471万人。2040年には約584万人にのぼり、高齢者の約7人に1人にあたると見込まれています。これだけ身近なことなのだと知って、わたしは少し肩の力が抜けました。特別なことではないからこそ、早めに気づいて、そっと寄り添う準備ができればいい。そう思えるようになりました。
本人を傷つけない切り出し方|帰省中にかけたい言葉の例
気づいたあと、いちばん難しいのが「どう本人に切り出すか」でした。わたしは最初、つい「最近おかしくない?」と口走ってしまい、母を黙らせてしまったことがあります。久しぶりに会った異変を前にすると、つい焦ってしまうのです。
本人の自尊心を守りながら寄り添う、わたしなりにたどり着いた言い方をいくつか挙げます。
- 心配を自分の側から切り出す:「最近わたしも物忘れが増えてさ。お母さんも一緒に1回診てもらわない?」
- 健康診断にまぜる:「せっかく帰ってきたし、健康診断のついでに頭の検査もしてみようよ」
- 否定せず受け止める:同じ話が出ても、「うんうん、それでね?」とさえぎらずに聞く
逆に、避けたかったのがこちらです。「また同じこと言ってる」「ボケたんじゃない?」と笑ったり問い詰めたりすると、本人は殻に閉じこもり、受診がかえって遠のいてしまいます。責めるのではなく、「一緒に」という言葉を添えるだけで、空気はずいぶんやわらぎました。
わたしが切り出し方に悩んでいたとき、いちばん助けになったのが、本人の見えている世界を知ることでした。同じ話を繰り返すのにも、片づけられないのにも、本人なりの理由があると気づくと、つい責めたくなる気持ちがやわらぎます。マンガでわかる!認知症の人が見ている世界をAmazonで見るは、その心の中をマンガで描いた介護カテゴリのベストセラーで、帰省前にざっと目を通しておくと声のかけ方がぐっと楽になりました。
気づいたあと、どこに相談すればいい?
「気になるサインに気づいたけれど、次に何をすればいいのか」。帰省の帰り道、わたしの頭はそれでいっぱいでした。まずは、お住まいの地域包括支援センターや、親のかかりつけ医に相談してみるのが入り口になります。診断の前でも、家族の不安を整理する手助けをしてもらえます。
気づいた後の親への接し方は認知症の親への接し方5つのポイントに、帰省をきっかけに介護を始めるときの流れは帰省と遠距離介護の始め方にまとめています。ひとりで抱え込まず、まずは相談から始めてみてください。
「今日が何月何日かわからない」というサインが気になったとき、わが家でまず置いてみたのが、日付と曜日を大きな文字で表示するデジタルカレンダーでした。略語を使わずはっきり表示されるので、離れて暮らす親が一目で今日を確認できます。高齢者向けデジタル日めくりカレンダー(特大表示)をAmazonで見るは、見当識の手がかりづくりとして帰省のときに持っていきやすく、相談までのあいだの小さな備えになりました。
【山本利也(ケアマネージャー)からのひとこと】
施設のケアマネとして言うと、気づいた段階で地域包括支援センターに相談していただくのは、とても大切な一歩です。診断がつく前でも、ご家族の不安を一緒に整理して、いまできることを具体的にお伝えできます。現場では「気づいたけれど誰にも言えず半年過ぎた」という方が本当に多いんです。ひとりで抱え込まないでください。早めに声をかけていただくほど、選べる道は広がります。
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認知症の親とこれからどう向き合うかを全体的に知りたい方は、認知症の親への接し方5つのポイントをご覧ください。帰省をきっかけに介護が始まったときは帰省と遠距離介護の始め方が役に立ちます。季節ごとの変化が気になる方は梅雨どきに出やすい認知症のサイン7つもあわせてどうぞ。

