介護うつから回復した話|ケアマネへの電話が最初の一歩だった

森の中で深呼吸する女性—介護うつ回復 介護疲れ・メンタルケア

介護うつから回復した女性が窓辺で静かにたたずむ様子

あの朝、介護うつだとはまだ知らないまま、母のオムツを替えながら気づいたんです。「泣けない」と。

悲しいのに、つらいのに、涙が一滴も出ない。感情のスイッチが切れたみたいな、空っぽの感覚でした。それが私の介護うつの入り口だったと、今ならわかります。

あのころの私に必要だったのは、根性でも忍耐でもなく、ただ「つらい」と言える場所でした。

介護うつから回復できた。ケアマネに電話したあの日から、少しずつ変わりはじめた

この記事では、私が実際に介護うつを経験し、少しずつ回復していった過程を書いています。「完治した」というよりは「折り合いがついた」という感覚に近いのですが、あのころに比べれば、確かに生きやすくなりました。今、同じように限界を感じているあなたに、少しでも届けばと思って書きます。

「もう限界かも」と気づいたのは、泣けなくなった日だった

介護を始めて2年目の春のことです。

朝起きるのが怖くなっていました。目覚ましより先に目が覚めて、「また今日も始まる」という重さとともに、ベッドから出られない。夜は疲れているのに眠れず、スマホで「介護 限界 もう無理」と検索していました。

母の顔を見るのがつらくなっていました。嫌いじゃない。でも顔を見ると何かがぎゅっとなる。ひどいことを言いたくなる衝動を抑えながら、機械的に介護をこなしていました。

そして、泣けなくなりました。泣きたい気持ちはあるのに、涙が出ない。これが燃え尽き症候群や介護うつの症状だと知ったのは、ずっと後のことです。

受診をためらっていた理由と、行ってよかったこと

「うつかもしれない」と感じてから、心療内科に行くまでに半年かかりました。

理由はいくつかありました。まず「うつだと認めたくなかった」こと。うつは弱い人間がなるものだという偏見が、自分の中にも根強くあったんです。それから「時間がない」こと。母を一人にして外出する時間を確保することが、そもそも難しかった。

背中を押してくれたのは、夫の一言でした。「顔色がおかしい。普通じゃないよ」と。

心療内科では、初診で1時間近く話を聞いてもらいました。うつと診断されたことより、「よくここまで頑張りましたね」という先生の言葉で、初めて泣けました。泣けないまま半年を過ごしていたのに、その一言でぼろぼろと。あの涙が、回復の始まりだったと思っています。

ケアマネに「自分がつらい」と打ち明けた日

受診と並行して、担当ケアマネとの面談で、思い切って話しました。「実は私自身がつらくて、限界に近いです」と。

それまでのケアマネへの相談は、いつも「母のこと」だけでした。自分のことを話すのは、なんとなく「介護者のくせに」という気がして、できなかった。相談していいのは要介護者の家族としての自分だけ、という思い込みがあったんです。

でも、話してよかった。ケアマネはすぐに動いてくれました。デイサービスを週2回から週3回に増やすこと、月1回のショートステイをプランに入れること。「家族が倒れたら、介護は続けられませんから」という言葉が、じんわりと心に沁みました。

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【山本利也(ケアマネージャー)からのひとこと】

ケアマネとして正直にお伝えすると、ご家族が「自分のつらさ」を話してくれるケースは、まだまだ少ないんです。遠慮されているのはわかりますが、介護者の心身の状態はケアプランに直接影響します。「もう無理かもしれない」と感じたなら、その一言だけでいい。ケアマネはそこから動けます。電話一本、遠慮なく使ってください。

休むことへの罪悪感と、少しずつ戻ってきた感情

デイサービスが増えた最初の日、母を送り出したあと、何もできませんでした。ぼーっとソファに座ったまま、時間が過ぎていった。「こんな時間を持っていいのかな」という罪悪感で、うまく休めなかったんです。

でも、2週間、3週間と続けていくうちに、少しずつ変わりました。窓の外の木が揺れているのをきれいだと思えた。久しぶりにコーヒーが飲みたいと思えた。ほんの小さなことですが、感情が動いた、と気づいたときは本当に嬉しかった。

介護うつの回復は、ドラマチックじゃないんです。じわじわと、ある日ふと「あ、少しマシかも」と気づく感じです。立ち直りというより、じわじわと溶けていく感覚でした。

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介護うつから回復した今、あのころの自分に伝えたいこと

あれから1年以上が経ちました。まだ介護は続いています。でも今は、泣けるようになりました。腹も立つし、笑うこともある。感情が動くようになったことが、回復した証拠だと思っています。

あのころの自分に一言伝えられるとしたら、「ケアマネに電話することは、負けじゃない」と言いたい。自分がつらいと言っていい。介護者が元気でいることが、結局一番の介護だから。

もしあなたが今、泣けない日が続いているなら。朝起きるのが怖い日が続いているなら。それは体が出している「休んで」というサインかもしれません。あなたのペースで、一歩だけ。

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