介護を嫌がる高齢者との向き合い方。40代の私が気づいたこと

介護を嫌がる高齢者との向き合い方 体験談・インタビュー

お風呂に入ってほしいだけなのに、なぜここまで怒るんだろう。そう思いながら洗面所のドアの前に立ち尽くした夜が、何度もありました。介護を嫌がる高齢者への対応は、まだ答えが見つかっていない人がほとんどだと思います。私もその一人でした。

介護を嫌がる高齢者に、どう向き合えばいいのか

最初に伝えたいのは「正解を焦らなくていい」ということです。嫌がる理由はひとつじゃないし、対応だって毎回うまくいくわけじゃない。でも少しだけ視点を変えることで、私は確かに楽になれました。

最初は「どうして嫌がるの?」という気持ちしかなかった

41歳で仕事をしながら母の介護が始まった時、私が最初に感じたのは戸惑いでした。要介護2の認定が出て、週に2回のデイサービスが決まったはずなのに、母は「行きたくない」「必要ない」と言い張るのです。

玄関に立って「もう時間だから行こう」と促すたびに、母の顔がこわばっていきました。介護スタッフの方が迎えに来ても「他人に世話になりたくない」と首を横に振る。ドアを開けるのを手伝おうとした瞬間、母の目に涙が浮かんでいました。

あ、泣いてる。なんで私は気づかなかったんだろう。

その時の罪悪感は、今でも忘れられません。親が介護を嫌がるのは、介護する側の何かが間違っているからじゃないか。そんな考えがずっと頭にこびりついていました。

嫌がる理由がわかったとき、少し楽になれた

介護を拒否する高齢者には、必ず理由があります。私がそれを理解できたのは、ケアマネジャーさんに「お母さんはプライドが高い方ですか?」と聞かれた時でした。

母は昔から自分のことは自分でする人でした。料理も家事も、人に頼るのが苦手。だから「介護を受ける」という現実が、自尊心を傷つけていたのかもしれない、と初めてわかったんです。

介護を嫌がる高齢者には、主にこんな理由があると教えてもらいました。

  • 自尊心・プライドの高さ(「まだ自分でできる」「世話になりたくない」)
  • 羞恥心(身体を他人に見られることへの強い抵抗感)
  • 恐れや不安(「何をされるかわからない」「生活が変わってしまう」)
  • 認知機能の低下(介護が必要な理由自体を理解できなくなっている)

特に認知症が進んでいる場合、介護が必要な理由そのものを理解できなくなっていることがあります。これは「拒絶」ではなく「困惑」なんだ、と気づいた時に、私の中の何かがほどけた気がしました。

嫌がるのは、私への反抗じゃなかった。そう思えた日から、少し息が楽になりました。

親が介護を嫌がる理由をもっと深く理解したい方には、遠距離介護の実体験をもとに書かれた工藤広伸さんの本が参考になりました。制度・見守り・お金のことまで一冊で把握できます。親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のことをAmazonで見る

力んで失敗した声かけと、うまくいった声かけ

最初の私の声かけは、今思えば最悪でした。「時間だから行くよ」「どうせすぐ慣れるから」「行ってみないとわからないでしょ」。これ、全部ダメなパターンです。

上から押しつけているし、母の気持ちをまったく聞いていない。あの頃の私は、介護をうまく「こなす」ことしか考えていませんでした。

少しずつうまくいくようになったのは、2つのことを変えてからです。

ひとつは、タイミングを待つこと。機嫌が悪そうな朝は無理に促さず、一度引いて様子を見る。少し時間が経ってから「今日はどう?」とさりげなく聞くだけで、ずっとスムーズになりました。介護の声かけはタイミングが9割だと、今でも思っています。

もうひとつは、選択肢を与えること。「行く?行かない?」ではなく、「今日行くのと明日行くのとどっちにする?」と聞くようにしました。自分で決めた感が出ると、母も少し前向きになってくれることがあります。

声かけひとつで、こんなに変わるのかと驚きました。

高齢の親の足浴をする介護者

入浴を嫌がる親に試してみてよかったこと

介護拒否の中でも、入浴拒否は特によくあるケースです。うちの母もそうで、「今日はいい」「さっきも入った」を繰り返していた時期がありました。

最初は脱衣所まで連れて行こうとして、毎回バトルになっていました。

試してよかったのは、まずお風呂の話をせずに「足だけお湯につけようか」と誘うことです。足浴から始めると、そのまま「全部入ろうか」という気持ちになってくれることがありました。あと、季節の入浴剤(柚子や菖蒲のパック)を見せながら「気持ちよさそうだよ」と伝えるのも、効果があった気がします。

「お風呂に入りなさい」という言葉ではなく、お風呂をいいものとして感じてもらえるような入口を作る。そのひと手間が、入浴拒否対策として一番効いた方法でした。

もし自宅でどうしても難しい時は、デイサービスでの入浴サービスに頼るのも全然ありだと思っています。私もそこに行き着くまでに、ずいぶん遠回りをしました。

一人で抱えすぎていた自分に気づいた日

正直に言うと、あの頃の私はいっぱいいっぱいでした。仕事を定時で上がって、急いで実家に向かって、母の介護をして、ご飯を作って、洗い物をして帰る。毎日がそれの繰り返し。

家族介護の限界って、突然来るわけじゃないんです。毎日少しずつ自分のコップに水が溜まっていって、ある日突然こぼれる感じです。

介護疲れという言葉を初めて自分のこととして認識したのは、帰りの電車で泣いた夜でした。「もう、限界かもしれない」と思った瞬間、地域包括支援センターという言葉が頭に浮かんで。翌日、思い切って電話してみました。

相談員の方に話を聞いてもらうだけで、ずいぶん気持ちが楽になりました。訪問ヘルパーの活用方法や短期入所サービスなど、自分では知らなかった選択肢をいくつか教えてもらえたことも大きかったです。

一人で抱え込まなくていい。それを実感として知れたことが、私にとって一番の転換点でした。もしかしたらあなたも今、似たような場所にいるかもしれません。

「一人でがんばりすぎない介護」を実践するためのヒントが詰まった一冊です。使える制度や頼れる人への相談術など、40代の現役介護者に役立つ具体的な方法が紹介されています。ムリなくできる親の介護をAmazonで見る

「頼ること」は、諦めることじゃないと思っています。

介護を嫌がる高齢者への対応に「正解」はないと、私は今でも思っています。でも嫌がる理由を知ること、声かけを少し変えること、そして頼れる場所を見つけること。それだけで、確かに少しずつ前に進めました。

完璧な介護者にならなくていいです。あなたはあなたのペースで、大丈夫です。