介護が始まって2年目のある夜、スマホに「介護 孤独 誰にも言えない」と打ち込んでいました。他の人の体験ブログを読みながら、画面の前でひとりうなずいていた。あのころの私に、この記事を届けたくて書き残しています。
介護中の孤独は、誰にも言えないまま深くなっていく
介護が始まってから、私はどこか「これは自分だけが引き受けるべきものだ」という気持ちになっていました。誰かに話すと負担をかけてしまう。愚痴を言っても介護をしたことのない人には伝わらない。そうやって少しずつ、心の扉を閉めていきました。
気づいたら、友達に連絡しなくなっていた
介護が始まる前は、月に一度は近所の友達とご飯に行っていました。でも母の介護が本格化してからは、誘いをなんとなく断るようになっていきました。
「今日はちょっと都合が悪くて」。そのうちに向こうからも声がかからなくなりました。自分でそうさせてしまったのに、なぜかさみしかった。
友達に話せない理由はいくつもありました。訪問介護のスケジュール、薬の管理、夜中の呼び出し。細かい話は経験していないと想像しにくい。話すにしても、どこから始めればいいかわかりませんでした。
それよりも何より、「介護で大変なんです」と言ったとき、「そうかぁ、大変だね」で会話が終わってしまうのが怖かった。もっとさみしくなりそうで、怖かったんだと思います。
夜中に何度も「介護 孤独」と検索していた
夜、母が眠った後が一番つらかったです。静かになると、今日うまくできなかったことが次々と浮かんできました。怒鳴ってしまったこと、手が止まってしまったこと、もっとやさしくできたはずなのにと。
そういう夜に、スマホでいろんな言葉を検索していました。「介護 限界」「介護 孤独 誰にも言えない」「介護者 うつ」。ヒットした記事を読むと、同じような経験をしている人がいることがわかって、少しだけ息ができました。
でも、それはあくまで画面の中の話です。現実の私の周りには、介護の話を打ち明けられる人がいませんでした。家族の中でも遠方に住む兄とは「介護のことはこっちに任せろ」という空気になっていて、弱音を吐けなかった。
誰にも言えない孤独というのは、ただひとりでいることとは少し違います。人の中にいても、誰にも届かないような感覚。あの3年間、ずっとその感覚の中にいました。

転換点は、ケアマネさんとの何気ない一言だった
介護3年目の春、ケアマネの担当者さんが定期訪問に来てくれた日のことです。母の様子や次のケアプランについて話していた最中に、ふと「最近、あなたご自身はどうですか?」と聞かれました。
そのひとことで、泣いてしまいました。わけもわからず、急に。
今まで誰も聞いてくれなかったわけじゃないと思います。でも、そのときの「あなた自身は」という言葉がすごく刺さった。母の介護者としてではなく、私という一人の人間として聞いてもらえた気がして。
ケアマネさんはあわてず、「よかったら話してみてください」と言ってティッシュを差し出してくれました。私はとりとめもなく、友達に連絡できなくなったこと、夜中にひとりで検索していたこと、誰にも言えなかったことを話しました。
「それは介護疲れの中でよくある感覚ですよ。あなただけじゃないんです」という言葉で、ようやく「あ、私は普通に苦しかっただけなんだ」と思えました。
【田中ケアマネ(介護支援専門員)からのひとこと】
介護者の孤立は、実はケアマネが最も気にしているポイントのひとつです。ご本人の生活支援に集中するあまり、介護する家族の心の状態を見落としてしまうことが現場でも少なくありません。「最近しんどいな」「誰かに話したいな」と思ったら、遠慮なくケアマネに伝えてほしいのです。私たちは介護者の方の相談相手にもなれます。次の訪問まで待たず、電話でも構いません。
今思うこと。孤独を感じていた自分を責めなくていい
あれから時間が経って、今は少しだけ違う景色が見えるようになりました。当時の自分が「誰にも言えない」と感じていたのは、弱かったからじゃないと思っています。誰に話してもわかってもらえないと思うほど、追い詰められていたんだと。
孤独を感じること自体は、何も恥ずかしいことじゃありませんでした。介護というのは、そもそもそういう状況に追い込まれやすい構造になっている。私が弱いんじゃなくて、状況が私を孤立させていただけだったんだと、今ならそう思えます。
もしかしたら今、同じように夜中にスマホを握りしめている人がいるかもしれない。この記事がその人の目に触れたなら、ただ「あなたひとりじゃないよ」と伝えたい。それだけです。
あなたはあなたのペースでいいんです。介護の孤独は、誰かに話せたとき、少しだけ軽くなります。まずはケアマネさんや地域包括支援センターに連絡してみるだけでいい。私が3年かかったことを、あなたはもっと早くできるかもしれません。
介護中に手元に置いてよかったもの
孤独な夜を少しやり過ごすために、介護の記録をつけることを始めました。自分の気持ちや母の状態を書き残すことで、ケアマネさんへの相談もしやすくなりました。
介護日誌:日々の記録を残すためのノートです。訪問介護スタッフとの情報共有にも使えます。
また、介護が始まったばかりのころ、全体像が把握できずに途方に暮れていました。そんな方には一冊手元に置いておくことをおすすめします。
親の介護をはじめる人へ:制度・手続き・心構えをやさしく解説した入門書です。「何から始めればいいかわからない」という方にぴったりです。
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